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バーサとサムの庭

イギリスって国土全体が庭みたい。
自然が厳しくない。たいていの国の自然よりやさしい。

草木が密集してる日本の山中は歩けないし、虫や蛇で恐怖を感じなくもない。
荒地が続くスペイン、中国、アメリカや、とがった高い岩山が多いスイスとイタリアの国境、乾ききった砂漠のアフリカやメキシコの自然などとも違う。

まばらな林があるだけか、木がなくてもヒースみたいな
背の低い植物がはえてるだけの自然。
なめらかな曲線の丘からなりたつ土地。
(もちろん真っ白い高い丘の切り立つドーバーのような
ところもあるが)ウォーキング用の靴さえはいてれば、道がなくてさえ散歩できてしまう。

イギリスに多い放牧地と放牧地の間には、「foot path」と言って、
ひと昔前に市民運動かなんかで、事実上公道化された散歩道が(おそらく)国中に整備されてる。
だから、ほんとうに国中の田舎が散歩可能な、「みんなの庭」みたい。


昔岩波文庫かなんかでちらっと読んだけど、大昔、イギリスも森林が密生し、クマなんかもいたそう。

それが人が手を加えつづけて、ああいうまばらな林、ゴルフ場っぽい風景になったそうだ。
武蔵野の林も、やっぱり100%野生ではなく、人の手が入っていると聞く。
以前書いたようにVは武蔵野の林を囲む公園を自分の庭のように思っているんだけど、それは無意識のうちに、ふるさとイギリスへの郷愁によるものなのに違いない。(武蔵野の丘を「English Hill イギリスの丘」と普通名詞を固有名詞化し公園名として勝手に呼び始めたのは私なのだけど)

自然というのは多くの人にとって脅威であり、人間にはコントロールできないものだけど
イギリスの「自然」は、人の手が入ってるから、人にやさしく見えるのか。


話はずれるけど、私は家を買ったり借りたりする時、家そのものより、家の窓から見た風景とか、環境に惚れる傾向がある。

横浜の家だって、少し歩くだけで海の香りがする土地、ということがあった。
それに正面に人しか通れない細い坂道があって、道の脇の壁は相当古い石の壁で、シダみたいな植物にびっしりと覆われている。

(細い道とか、シダに覆われた石壁とか、つまりその場所が相当古くから人に住まれてるということだ。
家を買う前、坂を行き来するイタリア人女性2人の会話が聞こえたことを今も覚えている。
そう、あの瞬間はまるでイタリアにトリップしたみたいだった。車と言う発明がなされるよりずっと前できた細い道、人の声が石の壁に響く、それが私にとっての、ヨーロッパのイメージ。)

あのとき、家を買おうと決意したような気がする。

私がバーサの家を大好きなのも、間違いなく眺望による。

屋根裏を入れて4階分もあるバーサの家。

そのすべての庭側の窓から見えるすばらしい眺望は、彼らが丹精こめている庭の延長にある、
上に書いたようなイギリス的な田舎の丘の風景なのだ。
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by nanaoyoshino | 2009-11-20 01:21 | 世界の庭とごはん

いっつもたくさん働かなくっちゃ

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イギリスのとくに街中は画一的なデザインのテラスハウスが多くって、
そこでは日本以上に庭は「猫の額」ていどの大きさ。

ずっと前日本で「イギリス人はガーデニングが好き」って聞いたとき、だから意外に思った。

バーサとサム夫婦の家は一戸建てではないが、テラスハウスでもない。

一軒の家の左右に別々の家族が住んでいる。

まあかなり一戸建てに近い感じ。

街の中心からバスか車で20分の郊外。だからか、庭は広い。

サムは早期退職してから、庭いじりにますます精を出して、川へ下りる階段を整えて
広々として踊り場を作ったり、
川べりの庭の隅に6角形のガラスの小屋を建てた。

庭の花々に囲まれ、天気のいい日は冬でも、暖房などなくても暖かく、
いつでも川のせせらぎが聞こえる。(「19 サマーハウス(夏のお茶室)にて」参照

暖房だけじゃなく電気も、電話もない。

(伝説で過去にイギリスにいたとされ、水があって人が少ないところに出没するとされる)
妖精も、夜になるとたずねてくるのかもしれない。

「なんでわざわざ遠いところへ旅行なんて行くの?こんなすばらしい庭があるのに」
とバーサとサムに言った。

「この状態にするのに、いっつもたくさん働かなくっちゃいけないのよ」

なるほど、美しい庭は、彼らにとって、すなわち重労働なのだ。
by nanaoyoshino | 2009-11-19 01:37 | 世界の庭とごはん

庭とごはん 3つの哲学

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バーサの家は、斜面に建ってるので玄関が2階、勝手口が1階にあり、細長い斜面をずっと下ると、川の堤防がある。

自分の家の庭で釣りができるので、ごくまれにサムが釣った魚をバーサが調理することもあるようだけど、それよりはサムが庭で作った野菜をバーサが調理して食卓に並べることがだんぜん多い。ジャムは庭の果物でストックできる分までバーサが作って、パントリーに保存したり、お父さんや妹に配る。

庭のものは有機だけど、何もかも庭で作るわけじゃなくて、安いものはスーパーで買う。スーパーより安くて苦労なく作れるものだけ、庭で作る。エコの哲学より、マネー哲学なのだ。ここ数年はそれにダイエットの「哲学」が加わった。

最近のバーサの食卓は、庭でとれた「高級」野菜と、スーパーで買った庶民的野菜をまぜたサラダが中心で、それにロースとビーフ少々(日本的水準からはたっぷり)、という粗食。

居間にはいつも「スリミングビューティー」という月刊誌がころがってる。

ダイエット広告の、読者報告会「何キロやせました!」みたいな内容。(そういえば私以前仕事でそっくりな記事広告を作ってたっけ!)成功し美しく痩せた読者の紹介と、ダイエットレシピだけで構成されている雑誌。

じっさい、彼女はここんとこ相当体重を落とした。

まあでも、イギリス人の食べ物って一般にボリュームが日本人の2倍くらいな感じだし、中でも肉類と甘いものは3倍って感じ。だからこのスリミング雑誌のレシピは私からするとべつにダイエットレシピでもなんでもない。たんに、普通。

Vと中国にいっしょに旅行したとき、観光地では中国人が、商品と電卓持ってしつこく後を追ってきた。
買うとも誰も言ってないのに、「How much?(いくらなら買うか)」と、
電卓を目の前につきつける。なんともきどらない商法。

Vは、どこへ行っても追いかけられるのに、茫然を通り越して、憤慨した。
「もう二度と中国には行かない」そうだ。
価格交渉して物を買うことを、イギリス人は想定しない。

いっぱんに中国人は「拝金主義」だと言われる。
たとえばお金がない男性は、どんなにハンサムでももてない。
万一彼女がいても、そういう、打算のない恋はバカみたい、という声を聞く。

イギリス人は、いくら得した!と自慢する。
もちろんその態度を恥じるようすもない点で
中国人とはかなり違う仕様かもしれないが、やっぱりお金には
かなりきどりがなく、実際的なほうだ。
by nanaoyoshino | 2009-11-12 23:43 | 世界の庭とごはん

あの家を初めて訪れたとき

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バーサは、Vの上のお姉さん。
結婚と同時に買った家は、たまたまその家の前を通りがかっただんなさんが気に入って申し込んでしまい、バーサには事後承諾だったとか。当時家は、廃墟のような悲惨な状態だったと言う。

だんなさんとは、前の職場での職場結婚。
バーサはその後転職したけど、だんなさんのほうはバーサと知り合った職場に勤め上げ、2年位前、60代を前に早期退職した。

だんなさんの退職後、バーサも早期退職し、ふたりとも30年以上勤めた会社からの年金なで、わりあい余裕のある生活をしてるように見える。

家は、1階にガラスばりのコンサーバトリー(サンルーム)や、物置、洗濯室、パントリー(食品用の倉庫)があり、2階にはキッチンと食堂と居間が2つ、3階には寝室が2つ、屋根裏にも寝室がある。

古い家が多いヨーロッパでは、家の購入価格以上に、リノベーションに費用をかけるのは珍しくないように見える。

私が初めて訪ねた10年以上前、ようやく、1階と2階をリノベーションし終わったところだった。3階から上はほぼ手付かずで、壁紙もなかった。

数年後には、まったくの物置だった屋根裏スペースが、ホテルのようなアン・スイート(バストイレつき寝室)に変わっていて、案内されたとき、屋根裏への、暗くて細い階段をわくわくして上ったのを覚えている。

その後3階の、壁に埋まっていたヴィクトリア時代の暖炉や、美しい階段の手すりをみつけて再生。

さらに、庭いじりのときのため、1階の庭のそばにトイレを増設した。

去年、居間の暖炉や壁を、柄の多いクラシックな仕様から、シンプルでモダンな仕様に作り変えた。

もとの家は状態がひどかったので安価で買ったそうだ。当時お金がなかった頃はほぼ全部セルフでリノベーションし、余裕ができてからは毎年大工を入れていたよう。

自分たちの経済状況に合わせ、30年かけてほぼすべてリノベーションし終わった家。でも、東洋風な床タイル模様や、掘り出され磨かれたヴィクトリア朝の暖炉など、数百年前に建てた頃のままのはず。

初めに自分たちでリノベしたらしい2階は、キッチンと食堂を庭に向けて増設し、庭に向けてガラス張りにされ、庭とひとつに見える。何代も以前の持ち主の意匠と、今の持ち主の意匠があたたかくマッチしている。庭のことは次回書きます。
by nanaoyoshino | 2009-11-07 23:52 | hundreds of days off

リノベでブラインドデート

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オランダでは、家に関する番組が、ほとんど四六時中、放映されてた。

オランダのだけでなく、イギリスのリノベ番組なども英語のまま放映されて。

類似の番組が多く、たぶん視聴者を飽きさせないため、それぞれ嗜好を凝らしていた。

たとえばある番組では、視聴者の女の子が一緒にリノベを手伝ってくれた3人の男から、リノベ終了後1人を選ぶ、というリノベでブラインドデート!みたいな番組とか。

たとえば、タレント(たぶん「リノベの達人」というポジションの)が、家の持ち主(視聴者)の意向を聞いて、視聴者の同居人には内緒でリノベを遂行。帰宅した同居人(恋人や家族)が「ここはどこ?」というくらい家を変えてしまう、ドッキリ番組。

新しく家を購入予定の視聴者が、国内や国外の売買物件をリポーターと見て回る。番組は物件そばの観光ポイントも紹介しつつ、価格の比較をし、彼らが買うか買わないか決定するまでを追うとか。

Vの家族は格別リノベ好きというわけではない。
Vの家で誰かがリノベに番組を見ているのを、一度も見かけてない。

Vのお父さんはほとんど24時間テレビを見ているけど、見るのは、スポーツとドラマ(警察や探偵ものと時代劇)とニュース、たまにショー番組。

テレビは1台しかないから、私もそのほかの番組を見たことがない。

でもVに聞くとイギリスもオランダ並みにリノベ番組の種類が多い、と聞く。

Vの家族にしても、壁紙貼りや壁のペンキ塗りは、すべて自分たちでやり、発注したことはないそうだ。


Vは日本にきたばかりのとき、「24時間、食べ物関係の番組がある」って言って驚いてたけど、考えてみれば別に料理番組だけじゃない。

日本ではたとえば旅の番組でも「食」は必須のポイント。

ショウ番組にもドラマにも、「食べるシーン」や舞台となった土地の名産の「おいしいもの」「味」がさりげなく、または当然の主題として紹介され、リポーターやゲストが食べるシーンが満載だ。

日本にいるとあたりまえだけど、ガイジンが見ると驚く。

日本の「食」にあたる、メインの関心事が、イギリスとか、オランダ(おそらく北欧でも。たぶん「食」への関心が宗教的にも抑えられていたプロテスタントが多い国)では、リノベとかインテリア関連なのかもしれない。
by nanaoyoshino | 2009-11-04 22:50 | hundreds of days off

夕日が沈む直前に

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What were you praying for?  何を祈ってたの?
For peace in this world. 世界の平和。
Really? I was praying only for myself! えっ、私は自分のことしか、祈らなかった!
○.・.。.・・・‥……━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「普段着の英語」ピックアップ


Vのお父さんは先週ついに老人ホームに入った。

入って数日後、ホームのお父さんを訪ねたお姉さんから電話がかかってきて、最初Vはお姉さんと話していてその後お父さんと話した。

私もVの後お父さんと話した。とくに大きな問題なさそうなようすだったけど、どんな部屋?とか設備のことをいくつか聞いたら、「おお、わからんよ、混乱してて、答えられんよ」と突然うろたえる。

電話の後Vが言うには
「親父、自宅からホームに引っ越すときは相当感情的になってたらしい、この世の終わりって感じで」

先日ずっと昔からの友達と晴海ふ頭公園に行った。

彼女は高齢者に関係する仕事をしてる。Vのお父さんのことで意見を聞いてみる。

仕事の経験から、とても説得力がある、確信を持った答えがいちいち返ってくる。

晴海ふ頭公園は彼女が好きな場所だ。

銀座歌舞伎座前あたりから、バス1本で、ほんの20分くらい。
バスはいくつもの橋を渡って大きな「晴海ふ頭ターミナル」に着く。
バスを下りてもほとんど人もいない。
彼女は以前ここで、船乗りの人に大型船の中を案内してもらったこともあるって。

私は海を見るとやっぱり旅したくなるなあ。

ちょうど夕日が海の向こうに沈む時間、海沿いの公園をのんびりと散歩した。
「フランスでは、夕日が沈む直前にお祈りすると希望がかなうっていう迷信があるらしい」って彼女に言ったけど、おしゃべりに夢中で、お祈りする前に日は沈んじゃった。

イギリスにいた時は、お父さんを無理やりのようにホームに入れようとするお姉さんたちに、私は少々失望していた。

高齢者の心境や、周囲の対応などを客観的に指摘してくれる彼女の話を聞いてたら、お父さんのホーム行きも、選択肢のひとつだと思えるようになった。

私はお姉さんたちのようにお父さんの世話も何もしてないから、エラそうなことなんて言う資格ない。

ただイギリスでお父さんといるときに、「自分がどこに住みたいかは、自分で決めれば?」とだけ言った。

今回の引越しに関しては、お父さんが自分で決めたのだ。
たとえ娘たちに強く勧められたからだとしても。

友人とは、20年くらいのつきあいがある。何年も会わなかったり、ときどき批判されたり、きまづくなったり。

長年つきあって知った仲なのでおたがいよいところも悪いところも知ってる。

でも彼女は、私がもっとも困ってるときに助けてくれた人の1人でそういうことは、一生忘れない。

ずっと以前、よく仕事をやめたい、と言っていた。あまりに切実だったのでもう本当にやめるのだと思ってたけど、結局やめなかった。ずっと長いことその職場でたぶん主要なスタッフの1人として働いてて、私の知ってる誰よりも、高齢者の問題に精通していて頼もしい。

開放的な海や夜景が美しい公園です。行きかたはこちら→「晴海ふ頭公園」

by nanaoyoshino | 2009-10-29 01:23 | SimpleLife/普段着の英語

オプスデイのクララ<7>

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クララはオプスデイの寮でずっと住んで働きながら、遠方に住むアスペルガー症候群の弟や、鬱の母や、最近亡くなった父を、世話してきた。

クララは自分自身、持病をかかえていて、長時間働くことができない。

クララの話を聞いてると、悪いことばかり彼女や彼女の家族に起こり、たいていはそういう話が多いので、不平のように聞こえてしまう。

弟が知人にお金を騙しとられたことから、彼女もまきこまれて実家の家を売るなどしている。

彼女の携帯には、売買に関する電話がしょっちゅうかかってくる。

そういう電話にてきぱきとまるで会社の上司みたいに、次々指示を出している。

まるでビジネスマンみたい。

そんな能力があるなんて知らなかった。でも以前から、論理的な話し方で、明確で、仕事ができそうなタイプだったかもしれない。

そういえば、以前私がオプスデイの寮に住んでた時、アップルパイの作り方を教えてもらった。誰もいない日曜日の午後、静かだけどよく通る声で、私のやるべきことを的確に指示してくれた。

クララは、どんなに面倒にまきこまれても困っても、パニックになることなんかない、と言う。オプスデイに長いこと住むといろんな人が出入りし、いろんな仕事をするから、人とやりとりするうちにそう思えるようになったのだそうだ。

聞くと、問題を解決する方法を見つけて実行したり、自分が家族の中で重要な役割を演じたこが嬉しくて、それが彼女の自信になっているよう。

7年ぶりに会ったクララは落ち着いた、たくましい女性に変貌していた。

雪のように色白な儚げな少女は、すっかり姿を消していた。
by nanaoyoshino | 2009-10-14 13:11 | hundreds of days off

オプスデイのクララ<6>

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スペイン人には私は控えめな日本人、とうつったようだったのに、控えめさにかけては日本人と少し違うふうにだけど、引けをとらないイギリス人には、私はずうずうしいヤツ、と思われるよう。

当時クララのほかにもう1人、美術館に勤めながらオプスデイを手伝うイギリス人の女性キャスがいた。

「あなたはナマイキ(cheeky)ね」
ある夜キャスに言われた。私はやや頬骨が張った顔かたちなのだけど、ナマイキ、と言うとき、頬骨(cheek)の上に細い指をそっと滑らせた。

でも彼女も、イギリス人にしては率直だったかもしれない。

イギリスとの接点が少ない中、スペイン人にはやはりイギリスの生活習慣のことは聞けない。
キャスは意地悪っぽいが、たぶんそうではなく皮肉っぽいだけだった。でも「ナマイキ」と頬をなでながら言われて以来、キャスにはものを聞きずらかった。
だから、英語の勉強も含めわからないことは、クララに聞いた。

クララとは、一定の期間ふれあいを持った、最初のイギリス女性だったことになる。
でも当時の私の英語能力では、あまり深い話や細かい話はありえなかった。

先日ロンドンでたずねた友達は、そのクララだ。
クララとは最近になってやっと、いろいろ話ができる。今ではオプスデイのことが前よりわかってなぞがとけたようだ。

オプスデイの寮には、なにか魔術的なほどの美しさの印象があった。
室内を、すみずみまでケアした芸術的なまでのデコレーション、テーブル、食卓の、きゅうくつの一歩手前の、完璧な習慣。

でも今では、そのような習慣を日常生活の美として伝えて行くのは、この団体の意識的な伝統というか方針なのだとわかった。それに家より何より、スペイン人やクララのような人がいたからこそ、そういう習慣も楽しめたのだと思う。
<つづく>
by nanaoyoshino | 2009-10-12 20:33 | hundreds of days off

オプスデイのクララ<5>

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これまでオプスデイを紹介した学生は、みんな問題なく寮生活を送った、と事務の女性は明るく言った。
もしあなたがうまくやれたら、これから日本人学生が来たらまたオプスデイを紹介する、とも。

クラスメイトに聞いたところオプスデイは必ずしも安いほうでもないと言う。どうやら私が前いたステイ先の料金のほうが、高すぎたようだ。
もっと安いホームステイ先すら、たくさんある、でもそういうところは家がぜんぜんきれいじゃないけど気にしないで住んでると聞いた。

オプスデイの寮長の女性や、家事や執務担当の女性(女中頭ふうの大柄な女性)などは威厳たっぷりのスペイン女性で、少し怖い印象だったのだけど、意地悪は一度もされなかった。


長期滞在の女学生たちはみなスペイン人で、スペイン人たちはいつも一緒に行動した。

クララは物静かで、体が弱く外出もあまりしないので、私はスペイン人たちの賑やかなおしゃべりにいつも囲まれて行動していた。

スペイン人は、いっしょにいても勝手にスペイン語をしゃべっていた。私は控えめで物静かな人、と思われているようだった。

私もたいして気にせず、笑ったり怒ったり困ったり、表情や会話の調子が激しく変わる、チャーミングな彼女たちのようすを眺めて楽しんでいた。ほとんどがそれぞれ個性的なのだけど、みんな純真で、おそろしく美人だった。

クララには「英語よりスペイン語のほうが身につくわね」とちょっと残念そうな、皮肉まじりのユーモラスな調子で言われた。
<つづく>
by nanaoyoshino | 2009-10-12 01:41 | hundreds of days off

オプスデイのクララ<4>

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オプスデイの寮を始めて訪れた日、ドアのベルを押してしばらく待つと、太り気味の女中風情の人がドアを開けてくれる。玄関だけでも、天井がものすごく高くて、居間と勘違いしそうに広く、アンティークのすばらしい家具が美しく配置されている。

案内してくれる部屋は、すぐには覚えきれないほどあって、食堂、キッチン、洗濯室、図書室などのほかに、大きな居間が4つある。

広々とした階段が4階建ての家の中央を貫いて、踊り場には、いちいち猫足のベンチが置いてあって、本を読んだりおしゃべりしたりできそうだ。

どの部屋もそれぞれ異なるテーマカラーやインテリアのテイストがあって、私の部屋になる屋根裏部屋はサーモンピンクの小花柄、案内してくれる女性が見せてくれた自分の部屋は、もっと落ち着いたモスグリーンのトーンで統一されている。どの部屋も、手抜きなく家具が選ばれ、それぞれ違うカーテンがかかっていて、掃除がゆとどいていた。

寮には、女子学生5人と、オプスデイで働くイギリス人2人、スペイン人2人10人ちょっとが住んでいる。

女子学生のほとんどは、スペイン人で、たった2人のイギリス人のうちの1人がクララだった。

辺鄙な場所のホストファミリーのところと違って学校に徒歩で行け、地下鉄駅に近く街にもアクセスしやすかった。

ドアを開けてくれた女性はマリアと言って女中頭のような立場らしい。食事ももちろん彼女が作った。

食事は必ず定刻に始まり、朝食や、毎晩フルコースのディナーや、サパーと呼ばれる紅茶とお菓子の軽食、週末のランチ、と食事のたびに、洗い立ての糊のついたテーブルナプキン、フォークやナイフ、スープ皿が、まるでレストランのようにテーブルに並べられた。

寮に住む全員が、ひとつの大きなテーブルを囲む。必ずスープから始まって、デザートで終わる食事は、大きなスープ入れやお皿から、それぞれが自分のボウルや皿にとって、隣の人にまわす。

テーブルセッティングや片付けは、マリアを中心に、クララともう1人のイギリス人女性がやる。寮生のうち手伝いたい人がきままに手伝う。

そのすべてが、イギリスというよりはスペイン的な印象を持ったけど、いまでは当時よりイギリスについて知ってるから、その印象はそれほど間違ってなかったように思える。


ホストファミリーのところの半額くらいの賃料で、交通至便な一等地という環境、豪華な家と食事、しかも掃除洗濯アイロンつき。話しが旨すぎるようなので、逆に不安になった。どこか怪しいんじゃないか、と思った。
ハウジングオフィスの女性と、学校の廊下でたまにすれ違った。
「どう?うまくやってる?」
声をかけてくれるので、これまで他に誰か紹介したか聞いてみる。

彼女はオプスデイに、ヨーロッパ人の学生なら何人か、紹介したことがあると言う。
<つづく>
by nanaoyoshino | 2009-10-11 00:56 | hundreds of days off