<   2008年 05月 ( 7 )   > この月の画像一覧

29 ヘビメタ青年ホームレス <西ドイツのエマウス-3->

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“「バーサとサムは家を30年前に買って以来、ずっと自分たちでリノベーションし続けてるよ」”Bertha and Sam have kept renovating their house since they bought it 30 years ago.”
「行くたびに模様替えされてるよね」”It looks changed whenever we go there.”
「イギリスではDIYショップが大人気だよ。でも僕は関心ないけど」”DIY shops are very popular in Britain. I’m not interested, though.”

■” have kept Aing since B過去形”  B以来、ずっとAし続ける
■Whenever・・・”  ・・・たびに
■ “・・・, though” 文末につけて”but”とほぼ同じ「でも」の意味でも、”but”より控えめな印象。
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「普段着の英語」ピックアップ

私にあてがわれてたのは、マットレスだけが置かれ、壁だけはペンキ塗りたてで、あとは廃墟みたいな感じの部屋だった。たった一人のルームメイトのアナベラは、髪の一部を金髪に染めた陽気なイタリア人の女の子だった。アナベラはドイツ人の男の人たちと廃品回収に行ってたので、朝と夜寝る前の時間だけ、私はアナベラとおしゃべりして、なんだか笑ってばかりだった。

ある夜遅く、家の管理人のヨハネスと他の人たちがジャケットを着こんで車庫に向かおうとしてた。聞いたら、ホームレスにスープを配りに行くのだそうだ。
「一緒に行っていい?」
大阪のエマウスの家でも、ホームレスへの配給を手伝ったことがある。

夜の街では大勢の人がもう並んで私たちを待ってる。ロッカーふうに、メタルのパーツの革ジャンなんかを着た人もいたけど、ほとんどがとにかく普通の青年という感じ。ドイツの若い人だから、背が高くてほっそりしてて、整った顔立ちの男女が多い。みんなスープを待ちきれないふうに集まってて、自分のボウルにスープをもらうのを待つ間は大声でおしゃべりしあって、日本でホームレスと聞いて想像するのとずいぶん違ってた。

普段の夜には、夕食後ヨハネスと他の数人が裏の林にイスとビールを持っていって、小さな焚き火を囲んだ。ヨハネスはタバコに火をつけると、夜が更けるまで話し続けた。薪のはぜる音とヨハネスのささやくような声だけ聞いてるのは心地よかった。ゆっくり落ちついたトーンで話されるドイツ語の響きは、貴族的なクィーンズイングリッシュや美しいけど自己主張が強い印象のフランス語とも違って、包み込むようにやさしい。

でも最初のうち英語に翻訳して私に気をつかってくれてた人が、話に興が乗り酔いがまわってくるうち翻訳するのを忘れがちになった。私は少し取り残された気分になって、子供みたいに寝つきのよいアナベラがもう部屋をまっ暗にして寝てる隣に、転がりこんだ。

アナベラはキャンプリーダーのヘルムホルツに特別な気持ちを持ってたらしいけど、私にはキャンプ中はそんなことは言わなかった。私がそれを聞いたのはキャンプが終わってから、アナベラの手紙でだったと思う。ヘルムホルツは考え深そうで静かな人だった。いつも穏やかな微笑を浮かべてるのでかえって私は彼が何を思ってるのか謎のように感じた。

ある晩私とヘルムホルツと、気がつくとたまたま、夜遅くまで古いレコードを聞いてた。そのときだったと思うけど、彼がギリシャに旅行に行くと聞いた。私もドイツからギリシャ、イタリアへと旅する予定だった。それでギリシャで会おうねと約束した。私がドイツを去る直前、アナベラともイタリアのアナベラの実家のある街で会おうね、と約束をした。結局私が、あとから来るヘルムホルツとギリシャで会って、アナベラとも合流することになった。ドイツを去る電車のドアが閉まる前、アナベラとヘルムホルツが私の頬にキスし、さよならを言った。<このテーマで次回最終回>
<写真について>
少女は過剰に着飾って、十分美しい。それでも"enough?"(足りてる?)と、呼びかける。
撮った場所:東京

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by nanaoyoshino | 2008-05-31 09:45 | SimpleLife/普段着の英語

28 夕食はウサギの庭で <西ドイツのエマウス-2->

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「イギリスの男の学生って部屋を片付けないの?以前のフラットメートの部屋がぐちゃぐちゃだったよ」”Do British male students never tidy their rooms? My flat mates’ rooms were terribly messy.”
「学生はそんなもんだな。就職すると整理するようになるよ」 ”The students are more or less like that. They tidy their rooms whey they get jobs.”
「イギリスの男女関係も同じだって聞いたことあるよ」 ”I heard the man and woman relation ships are the same in Britain.”
■male 男の
■tidy 片付ける
■terribly ひどく
■more or less 多かれ少なかれ
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「普段着の英語」ピックアップ

ニューヨークから来た夫婦はともに真っ白く長い髪で、14歳の娘ソフィをいっしょに連れてきてた。ご主人は音楽関係の仕事をしていると言って、私が音楽の話をしたら親近感を持ってくれたのか、食事の時は近くに座った。アメリカ人の家族以外に、イタリア人、フランス人とポーランド人が1人ずつ、あとはドイツ人が5~6人で私とソフィ母子、私のルームメイトの女の子以外は男性だった。

朝8時ころ、おもに地元のドイツ人が廃品回収に行き、他の人たちは皿洗いと掃除や、ペンキ塗り、昼食の準備を始める。掃除を始めようとすると、ソフィは廊下のまん中をほうきでこすっただけで「It’s finished!」(終わった!)と言って、冷蔵庫を開けてミルクを飲んでだ。

ドイツ人がソフィの座ってる周りのイスをテーブルに上げ始め、家具をずらして裏までほうきで掃いてた。今日は大掃除の日なの、と尋ねたら、「少なくともわが家では、掃除といえばこうするだけさ」みたいな答えだった。私とポーランド人は家具までは動かさないけど、スミまでほうきできちんと掃いてた。

10時を過ぎるとなぜか2回目の朝食をとることにしていて、ソフィが「Second Breakfast!」と号令をかけると、別の階に掃除に行ってた人も集まって来た。ソフィはあどけない顔立ちだけどふっくらして体つきはもう女らしく、ぷいっと横を向いて立ったまま壁にもたれてパンを食べてるのが、絵になった。

夕飯の支度を手伝い、テーブルをスポンジで拭いてナイフとフォークを一組ずつ全員の席の前に置くころ、みんなが帰ってくる。大きなお鍋のシチューを部屋の入り口に置いて、それぞれの人が自分の皿を持ってよそった。英語初心者にとってはネイティブの発音は、ネイティブ以外の人が話す英語よりはるかに聞きとりにくい。私がソフィの親の英語をわからなくて落ち込んでたら、それをわかってあまり私に話しかけようともしなかったソフィが突然、「Don’t worry, Be Happy!」(くよくよしないで元気出して!)と太い声で言った。

一日の終わりにやることもなくて、狭いキッチンの前を通ったら、大きなテーブルの奥の席をソフィが陣取って、まわりに男の子たちが集まってる。話すでもなく長い腕をだらりとたらして、テーブルにそれぞれうつむいてる様子は、まるで全員が美しいソフィの絶望的な崇拝者であるかのようにも見えた。

ある夕方ソフィが食器やら、ボウルやらを持って階段を早足で下りていった。いつのまにか庭の建物前に大きなテーブルや、イスが並べられてた。少しずつ外から人が帰ってきて、テーブルの周りに集まった。校庭だったところにはウサギの数が異様に多かった。せっかくのやわらかそうな芝生の上はウサギの糞が多すぎて座ることもできなさそう。だんだん日が暮れてきて、気持ちいいい8月の風が通り抜けてった。

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by nanaoyoshino | 2008-05-24 23:11 | SimpleLife/普段着の英語

27 シベリア鉄道の先 <西ドイツのエマウス-1->

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「今ごろチャンピオンリーグのために、4万人のイギリス人サッカーファンがモスクワに集まってるよ」”40,000 English football fans have been to Moscow for the Champion leag today.”
「何でイギリスの2チームがモスクワまで出かけて試合しなきゃいけないの」 ”Why do the 2 English teams have to play in Moscow?”
「ヨーロッパで戦で、たまたまイギリスの2チームが最終まで残ったんだ」 ”They happened to win the semi-final in the European leag.”
「イギリスのサッカーファンたち、今頃ウォッカ飲んで酔っ払ってるでしょうね」 ”The English football fans must be drunk with their vodka now!”

■たまたま・・・する  happen to ・・・
■酔っ払う be drunk
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「普段着の英語」ピックアップ

エマウスの家に週末通ってた頃、ヨーロッパのエマウスワークキャンプのことを耳にすることがあった。当時はインターネットもなく、たぶん目録か何でドイツのエマウスの家のことを調べたのだと思う。

旅がしたくて8月に会社をやめて横浜から船に乗り、シベリア鉄道に乗りかえた。1週間お風呂には入れなかったけど、乗り合わせた世界中の旅オタクと毎日がパーティー三昧。でも最初の船が台風で遅れたツケが最後に回ってきて、モスクワに着いたらそれ以降のホテルや交通の予約がすべて無効になってた。おかげでいくつも修羅場を通り、当時混乱と監視の社会に映ったソ連を脱出したときには心の底からほっとした。

ドイツに着いてからも長距離電車から町のトラムに乗り継いだ。地図を見ながらエマウスの家があるらしい場所を歩いたら、あるのはまばらな林だけで、トラムを降りて以来、通行人すら見かけない。木と木の間に小道らしい隙間を見つけて立ってる時、背の恐ろしく高い若い男の人が隙間の奥から出てきた。地図と住所を書いた紙を見せると、促すように林の中のもと来た道へ戻ってった。

暗くて人けもない林の中へ行くことを躊躇したけど、様子を見ながらその人の後に離れて歩いた。すぐに林は広々としてウサギがはね回る校庭のような空間へとぬけた。3階建てのレンガの建物を指し示すと、男の人は林の方へ戻って行った。

後で知ったのだけど、そこはむかし学校だった。建物の真ん中に大きいひさしがあって、その下が正面入り口だった。大きな階段があって、廊下を歩いて誰かいないかなあと思っていたら、廃墟みたいな大きな部屋で無言でペンキ塗りをしてる人たちがいた。脚立の上で、ペンキの飛び散った作業着の青年達が、壁を白く塗っているところだった。

やっぱり後で、林の入り口で会った男の人が、エマウスのワークキャンプに来てた地元のドイツ人だと知った。彼が他のみんなと離れて地下の廃品回収品収納庫の外で一人たたずんてた、少し不器用そうな、ひょろっとした姿を思い出す。一見ぶっきらぼうだったけれど澄んだ目をしてた。

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by nanaoyoshino | 2008-05-22 23:38 | SimpleLife/普段着の英語

26 「この人持ってって」

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「会席料理ってきれいだよね。ランチなら安いかもよ」 ”Kaiseki is beautiful, isn’t it? It might be cheaper at lunch time.”
「反対だな、あんな小さいお皿じゃね。お腹減ってるんだから」 ”I don’t think so. The dishes are too small. I’m hungry.”
「あ! あそこにお好み焼き屋がある」 ”Look! There is an Okonomi-yaki restaurant over there.”
「お好み焼きがいいな!」 ”I like Okonomi-yaki!”

■"I don’t think so. " やわらかく反対したいとき、便利な表現。
■"Look!" 何か見たときの「あ! 」。ちなみに何か聞いたときの「あ! 」は "Listen! "
■"I like・・・" 「がいいな」と好みをあらわす時は "・・・is better"なんて言うよりこっち。
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「普段着の英語」ピックアップ

須賀敦子さんのことを書いたら、エマウスの家の次は20年以上昔のエマウスワークキャンプのことまで思い出した。京都で廃品回収したとき、坂道に伝統的な醤油醸造所が多かった。「捨てるものありませんか~?」と、割り振られた地域の家で声をかけた。趣旨(廃品回収品をお金に換えて国内外の非営利団体へ送る)を説明するとたいていの人がとても親切に、何かさしだせるものがないか探してくれた。自営業の醤油醸造所や床屋さんだと、奥さんが少し考えてから「この人持ってって」とだんなさんを指し、まわりを笑わせたことも何回かあった。坂道に並ぶ格子の建物に一歩入ると、入り口が広々した町屋ふうの作りの土間は暗くてひんやりしてた。

エマウスワークキャンプは基本的に一日労働しているので、仕事をしている感覚はもちろんあった。でも報酬も利害関係もなくて、八百屋でタダで野菜の切れ端をもらい、みんなで上手に調理して分け合い冗談言いながら食べたりすると、希有な仲間意識が生まれたこともあった。いろんな人が出入りするので旅の途中のようでもあり、大学生とか純粋で若い人が多くてドキドキするような、非日常的な空間だった。

そのころワークキャンプは毎年3月だった。キャンプの場所は学校や教会、資産家の所有する空き家などで、暖房や寝具も限られて季節の移り変わりがふだんより極端に感じられた。3月は不思議な季節で、初めは寒くて厳しい冬のままなのが、終わり頃気がつくと、光あふれる暖かな春の日差しに劇的に変化してた。

坂道を上りきったあたりに必ずと言っていいくらいお寺があって、毎日お寺を通ったり休憩したりしてどこがどのお寺だったかよくわからなくなった。眺めのいい高台の静かなお寺の廊下から、春のやわらかい色に染まり始めた林のあいだに梅や桃の花がところどころ見えた。

休日にあたる日だったのか、ほとんどがキャンプで初めて出会った5人くらいで、伏見稲荷に行った。誰かが言い出して、たぶん誰も予備知識が十分ないまま午後も遅い時刻に出かけたところが、どこまでも赤い鳥居の階段が続いて1時間歩いても2時間歩いても鳥居のトンネルを抜けなかった。日はほとんど暮れるし、くたくたになって悪い夢でも見てるみたいになってきた。関西出身の人独特の明るさでもり立ててくれて、何とか上りきったときには真っ暗で他に参拝者もあまりなかった。

その後ヴィンセントと京都に行き伏見稲荷を一緒に上った。ヴィンセントは京都から戻ってしばらくの間、イギリスの家族から電話がかかってくるたびに「赤い変わった門が山の頂上まで長く続く神殿」の話をしてた。その後イギリスから家族が来るたびに伏見稲荷に連れて行った。

私がエマウスを知ったのはワークキャンプのポスターを、大学の掲示板で見たとき。日程や開催場所が自分が別の用事で出かける予定だったのと、たまたま一致したのだったけど、亡くなった母に何もしてあげられなかったという気持ちが「誰かのために何かする」というエマウスのボランティア活動にこたえをみつけたのかもしれない。

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by nanaoyoshino | 2008-05-18 01:23 | SimpleLife/普段着の英語

25 エマウスの家の思い出

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「明日エマウスの家に行くの。困ってる人とかが、社会的援助がなくても自分で働いて暮らせる家」 "I'm going to Emmaus house tomorrow. The house is for the people with difficulties. They can work and live there without social support."
「君のエマウスの旧友に会うってわけだな」 "Then you will see your old bunch there."
「そう、フランス人も結構来てるよ。エマウスはもともとカトリックの神父さんがフランスで始めた運動なんだよ」
"Yes, but there will be quite a few French people as well. Emmaus is the volunteer organization some Cathoric priest started in France."

■I’m going to  口語でたんなる予定を表す場合 I will より一般的。 I will はもっと強い意思を表す場合に用いる。

■a few  2,3のなどと訳されるが、会話では「意外と多く」とか「結構たくさん」のニュアンスで、「数個」くらいの感覚で使われる。

■a bunch  もともと「束」という意味だが、 口語表現では「友達」(複数の)を意味することもある。
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「普段着の英語」ピックアップ

東京のエマウスの家を思い出すとき目に浮かぶのは、庭の10本の桜の木から風が運んでくる花びらが、いつまでも舞っている食堂。桜の木の下で、スペイン人の神父さんがカスタネットを鳴らしながらフラメンコを踊っている風景。20年あまりも前のことになってしまって、まるで夢の中のできごとのように思えるけれど、今でもあの日神父さんにいただいた黒いゾウのペンダントトップが、毎日使っているガラスの宝石箱の中にある。ゾウといっても丸い輪郭で指先くらい小さくて黒く、さわると少し冷たく重い感じだ。

週末行くといつも何人かのお客さんがいて、その日もそうだった。神父さんといっても私服で、体格のいい陽気な人だった。テーブルと椅子が食堂から庭に持ち出され、テーブルの上にはワインや、料理のうまいシスターが作った食事が並んだ。皆ワインを飲んでいたけど花見といっても静かな会だった。神父さんからスペインでは子供も大人も、食事のときにワインを飲むと聞いてびっくりしたり、庭にある桜の木を初めて数えたのもそのときだった。誰もお酒に酔うことなくお茶でも飲むみたいにワインを飲んだ。もちろん誰もが贅沢なほどたくさんの桜もここちよさそうに楽しんでいた。

それは私が週末だけエマウスの家で料理や草刈りを手伝ったりしてたころ。私の恩人であるCさんが訪れてゆったりお茶を飲みながら食堂から庭を眺めているのを、初めて庭からお見かけしたのも、そのころだった。痩身にまっ白い作務衣を粋に着こなして、ポップミュージッシャンだと勝手に思ってたら、仏教のお坊さんだった。

須賀敦子さんもそのころ、ときどきエマウスの家を訪れていたのだろうか。そうだったにせよ、私はその頃須賀さんのことは何も知らなかった。エマウスの家に住んでいたDさんとは行くたび顔を合わせた。いつでも背筋を伸ばした、姿勢も礼儀もよい人だった。ひかえめでまっすぐな、なんだか野の花がぱっと咲いたみたいなDさんの笑顔に出会うたび、ここに来てよかったと思った。

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by nanaoyoshino | 2008-05-14 22:45 | SimpleLife/普段着の英語

24 須賀敦子と日本人

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「ジェイムズ・ジョイスはトリエステで何してたの?」"What was James Joyce doing in Trieste?"
「英語の先生かなんかじゃないかな。ジョイスは自国には戻らず、イタリアで自国の物語だけを書き続けたんだよ。」"I suppose he was teaching English. Joyce did not go back to his own country and he wrote stories only about his own county."

■"I suppose ・・・" 「・・・じゃないかな」というときはこの言い方。そのあと文をつなげるだけ。難しそうな語だけど、簡単だし、みんな口語で使ってる。
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「普段着の英語」ピックアップ

私と須賀さんのエッセイとの出会いは、数年間の外国暮らしから帰国して本屋で見かけたのが10年くらい前。手に取ったのは、まわりに須賀さんを直接知る人がいて、聞いたことのある名前だったんだと思う。でも購入したわけは、ヨーロッパの階級社会となんとか折り合いをつけていく孤独な日々をつづった須賀さんの文章に、自分の体験とどこかしら重なる部分があったからだったと記憶する。

須賀さんを直接知る方に「なぜ須賀さんのエッセイが人気なのだと思う?」と聞いたら「他にああいうのないでしょ」とただ一言、言われてふに落ちた。

日本は、地理的に海という自然で隣国と遠く隔たってる。歴史的にあまり戦う機会もなく、狭い島国でお互い自己主張するより、仲良く折り合いをつけてきましょ、という隣人との調和を保とうとする衝動、って他の国民以上にある気がする。それに本当は差異があっても、違いはうやむやにして、なんとなくなじむことによって巧妙に孤独感を遠ざけてるようにも見える。もちろん日本国内でも、社会的に優位にたってるマジョリティーと、社会的マイノリティー(民族や身体的など)とでは感じ方もきっとぜんぜん違うから日本人といってもまたいろいろなんだけど。

イギリスのラジオとか聞いてると、よく視聴者が電話でパーソナリティと喋ったりするのは日本のラジオ番組と同じだけど、イギリスの視聴者ってたいてい堂々と論理的に自分の意見を述べるので、みんな評論家かプロのコメンテーターみたいに聞こえる。ラジオに電話する庶民が自己を主張する技術をはからずも披露してるのが、やはりしょっちゅう隣国と入り混じり戦いあってきた大陸の歴史と、必ずしも無縁じゃないように思える。

他人との隔たりを見ないふりして互いになじもうとする日本は、多くの人にとって暖かい社会だ。でも、真実は皆違う人間だし、異質である以上お互いに完全に理解することは不可能だしその意味で皆、孤独だ。

須賀さんのエッセイに「鉄道員」だったか、イタリア映画のシーンが出てくる。暗闇で、鉄道員の登場人物が電気のスイッチを探す。その家が、やはり鉄道員の親を持つ夫のペッピーノの実家と同じ構造だったから、須賀さん自身が、スイッチは左側、と心の中で叫んだくだり。須賀さんもまた、成人してからヨーロッパに渡り日本人としての居場所をみつけようと、暗闇でひとりさまよってるように思える。

労働者階級の家に生まれて知的探究心を満たそうとするペッピーノ、須賀さんと同様外国人として自己の生き方をみつけようとさまよう友人たち、一人ヨーロッパへの憧れをいだいたまま他界した父。須賀さんのエッセイは、須賀さんが愛したやはり孤独な人たちへの、届かない呼びかけのようにも思える。そのもどかしさが、明かりを探す映画の登場人物へ呼びかけるかのような須賀さんの心の声とどうしても重なってしまう。

渡欧した日本人によるエッセイには、日本社会マジョリティーを代表とするエリートとしての感受性そのまま、っていうのものも多い。須賀さんのエッセイは、孤独な心の漂泊が鮮烈な緊張感をもった魂の叫びとして際立って「他にない」ように思える。

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by nanaoyoshino | 2008-05-08 00:45 | SimpleLife/普段着の英語

23 麦わら帽子と人混み

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「ここで休もうか。」 “Shall we take a break here?”
「ここは人が少ないしきれいでいいけど、橋の向こうからバンドの音が聞こえてうるさいね。」 “Here is quiet and beautiful but the sound of the band across the bridge is noisy.” 
「バンドの音がうるさいと思ったらトシってことらしいよ。」 “Sombody said that if you find the sound of the band noisy you're old.”
「そうかな。時と場所によると思うけど。でも、なんか私も踊りたくなってきた。まだトシじゃないのかな。」 “Well, I think it depends on the time and place. But I somehow feel like dancing! I might not be so old!”
「うん、僕も踊りたくなってきた。」 “Yes! Me,too!”

■“Shall we ・・・?” は、 「しようか」で会話の定番。“Shall we dance?” って映画もあったっけ。
■"I somehow feel like dancing!" "somehow"「なんか」はあいまいな気分を表す。
■"feel like ・・・ing" 「したくなる」 これもあいまいに・・・したいかも、というときに。
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「普段着の英語」ピックアップ

代々木公園に行きたいとヴィンセントが言う。私とヴィンセントは時々代々木公園を散歩する。20年ほど前のゴールデン・ウィーク、東京に住んでる友達を訪ねて初めて山手線に乗った。天気もちょうど今日みたいな汗ばむ陽気だった。イキイキした休みの日の顔をした人たちが乗り降りしてたのを覚えてる。当時住んでたところでは地下鉄しか利用しなかったから、電車の窓から明るい光が差し込むのが印象的だった。原宿近くの代々木体育館の高台の上を友達と歩くと広々とし見晴らしがよく、下を通過する山手線が見えた。私はそんなことヴィンセントには言わなかったけど、じゃ行こ、と言った。

代々木体育館のほうへ行く道は人、人、人。私は人混みはあまり好きじゃないから、そこへ行くのはやめた。代々木公園も、普段は人があまりいない明治神宮の側の森でさえ、歩いてたらサイクリングの自転車が次々ぶつかりそうになって、のんびり歩けないくらい。一周して原宿のほうへ戻る頃、別の友達とここに来たとき、渋谷側へ行く橋を渡ったことを思い出す。私はやっぱりいちいち言わないんだけど、公園の目立たないところに橋があったんだ、とだけ言う。でもあった場所はあまり覚えてない。

橋はたくさんの木に隠れて近くに来てもヴィンセントはちっとも気づかないくらいだった。橋を渡るとどの道へつながってるのかも覚えてない。橋の向こうでは一目見ていろんな国の人たちがバスケットボールをしていて、向かいにはサッカーか野球場のようなところで、わずかな人数の人がちょうど試合を終えたところで、傾きかけた太陽の光が広々としたグランドいっぱいに満ちてた。渋谷のまん中に、これほど巨大な空間がただあるのが不思議だった。

NHKの脇の並木道で、フリーマーケットの撤去が始まってゴミが積みあげられてる。渋谷駅に向かって歩いてったら、ちょっと外国っぽいGAPの建物があった。夏のハイキング帽が汚れてしまったので、帽子がほしいと思ってたのを思いだし、いろいろかぶってみたくなった。ヴィンセントに見てもらったら、麦わら帽子みたいなのが似合うという。

どこかへ楽しく出かけて、好きな人に何か買ってもらうのが好きだ。その後その品を見たとき楽しかったことを思い出すし「あ、それ買って上げたやつ、使ってるんだね」と思い出してもらって、自分一人でなく二人とも嬉しい。自分が買ってあげても同じなはずだけど、実際にはヴィンセントは出先でそうそう欲しいものがない。

渋谷駅へ歩いていく道はいつも人が多くて、反対に渋谷からこちらへ向かう人もいるから人の流れに沿って歩くしかない。さっき買ってもらったばかりのつばの広めの麦わら帽子をかぶったまま、渋谷駅で他の大勢の通行人の中で切符を買うヴィンセントを待つ。

切符売り場は昔からあまり変わってなくて、いろんな人との帰り道やっぱり渋谷駅でさよならしたことを思い出した。友達と、彼女が連れてきた男の人たちとブラインドデートじゃないけど食事に行った帰りや、シベリア鉄道であった人たちと一年後に再会した帰りとか、ボランティアの仲間と待ち合わせして印刷物のうちあわせしたこととか、いろんな過去が、記憶の底から浮かび上がっては行ったり来たりする。

私のGW&おすすめお出かけスポット!

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by nanaoyoshino | 2008-05-05 07:43 | SimpleLife/普段着の英語