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22 大国魂神社

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「なんであの食堂好きなの」 ”Why do you like the restaurant?”
「きどってないから」 ”It’s unpretentious.”
「つまり見かけが悪いってこと?」 ”You mean you like bad looking restaurants?”
「そう」 ”Yes.”
「わかった。見かけが素敵だと高そうと思っちゃうんでしょ」 ”I see. You associate good looks with high prices.”
「そう」 ”Yes.”
「じゃ見かけが良くて安いのと、見かけが悪くて安いのはどっちがいい」 ”Then which do you like, the good looking but reasonably priced one, or the bad looking and reasonably priced one.”
「見かけ悪いほう」 ” The bad looking and reasonably priced one.”
「なんで?」 ”Why?.”
■ ”You mean 「つまり」のバリエとして"So"の代わりにさしこめば英語がこなれて聞こえる。
■”I see.「わかった」「なるほど」"I understand" より軽いニュアンスで。
■reasonably priced 「納得価格」 "cheap"より「ただ安い」だけじゃない感じを出したいとき。
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「普段着の英語」ピックアップ

府中駅から並木道をを3,4分歩くと、大国魂神社(おおくにたまじんじゃ)の入り口で並木や境内の木の葉が柔らかい緑に輝いてた。前に来たのがお正月頃で、今は4月だから同じ場所でも明るくやさしい、まるで違う雰囲気に変わってる。府中駅の窓から江戸時代のようなとても古い家が向かいにあるのを見かけて行ってみたら、やはり江戸時代みたいな下駄や草履を売ってた。神社の建物の入り口に草履が並んでるのを見て、この神社に勤める人が履物屋のお客さんだったんだと思った。

ここではゴールデンウィークに盛大なお祭りがある。去年たまたまGWにやることがなくてこの神社に来たらあんまり盛大なので驚いてしまい、3日連続足を運んでも飽きなかった。上に6人の男が乗れるほど大きな太鼓(実際に乗ってた)が、次々に滑車に乗ってやってきて、太鼓の音が並木道に響くとすごい迫力だ。お正月も伝統的なお囃子みたいのや、太鼓も来てたけどGWの太鼓は、5~10台をいっせいに叩く。

私は太鼓の音を聞くと興奮して踊りだしたくなるところがある。生まれたばかりの赤ん坊だって太鼓の音を聞くと笑ったり体をゆらしたりするけど、生まれる前は母のからだの中で心臓が打つ音を聞いてて、さらにその前の生殖行為だってビートのようなものがあるし、リズムやビートへの本能というか、人間の肉体や起源と結びついてるんじゃ。

境内の裏には老いた巨木があって、無数に分かれた根がまとまったように見える幹の間から緑がはみ出て、見上げると細かいたくさんの葉が空をおおってる。誰かがこういう老木の生命力にあやかってか、幹を両手で抱きしめてるのを見ていらい、とりあえず私も手で幹をふれてみる。木の幹は冬でも暖かいし、春でも同じように暖かい。説明のプレートには、ある大学の研究室もこの巨木の生命力のもとになる生物学的秘密を探るべく、この木を調査対象としてるらしい。

府中に来たとき私とヴィンセントは、たいてい吉田屋という並木道のそば屋兼食堂で食事する。吉田屋は昭和の時代から変わってないようなビールのポスターが貼ってあり、何でも安くておいしい。映画「男はつらいよ」みたいな店だとヴィンセントは言う。寅さんの実家もなんか飲食店だったっけ。ヴィンセントは日本語のせりふもわからないのにNHKで寅さんシリーズが放映されたとき、ほぼ全映画見てるくらいこのシリーズが好き。

どのくらい営業してるんですかと店の人に聞いたら、かっぽう着に頭巾の女性が教えてくれた創業年は忘れたけど私が生まれる前くらい古かった。ここ何年かおおみそか私とヴィンセントは大国魂神社にお参りに来てここで年越しそばを食べる。中国に旅行に行ったとき、そばは長寿を意味するから縁起がいいと聞いたことがある。お寺や神社の近くにそばやがあるのも、それと関係あるのかな。この神社の歴史があってそば屋も履き物屋の歴史もあるんだな。吉田屋でヴィンセントに「幸せそうな顔してるね」と言ったら「餃子おいしかった」って言って笑った。

私のGW&おすすめお出かけスポット!

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by nanaoyoshino | 2008-04-30 23:19 | SimpleLife/普段着の英語

21 茫然とするほど見渡す限りの

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「あれ、この木の上に白い花が咲いてる」 ”Look at the white flowers on the tree!”
「下にも赤い花があるよ」”There are red flowers down here ,too.”
「ここはまるで花の舗道だね」 ”This is like a flower pavement.”
「あの木もつぼみがもうすぐほころぶよ」 ”That tree is budding ,too.”
「明日、ここでお昼したいな」 ”I want to have lunch here.”
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「普段着の英語」ピックアップ


ヴィンセントのお父さんから電話があって桜はまだ咲いてるのって言うから、とっくに終わったよ!と言ったら、オレんちの前の桜はまだ咲いてない、つぼみだってまだだよって。気温を聞いたら最高気温が8度で、まだ冬みたいだよって言う。桜はほんの数日しか持たないんだよとヴィンセントのお父さんに言ったら、じゃあ写真送ってくれてよかったよって言った。

お父さんはもう村一番のお年寄りみたいなもので、体のあちこちが具合悪く、毎年外に出ることが少なくなってる。電話で話すとどこに行ったのって聞きたがるから、ヴィンセントはどこに行ったよって話して、私は写真をメールすることが多い。

ヴィンセントが日本に初めて来た年、来たとたん桜が満開になって、ちょうどその頃住んでたところは神田川のそばで、ヴィンセントはまだ仕事を探してる頃で、私が勤めに行ってる間時間があったから、神田川沿いによく散歩してたんだそう。たぶん初めて来たアジアで、初めて見た桜・桜・桜の川べりで、ただただ圧倒されてたんだろうなって想像できる。

ヴィンセントはよく、実家の前の通りの桜の木の話をする。ヴィンセントによると、その桜は日本のソメイヨシノより鮮やかな桃色なんだって。私が3月ヴィンセントの実家に行くといつも大雪で、飛行機が飛ばなかったり、タクシーが雪で来なかったりで、家の前の小さな桜の木には、花の代わりに雪が積もってた。

今年私とヴィンセントはもう何回花見をしたかわかんないくらい。だって私の住むところは、別に桜の名所なんかじゃなくても、ずいぶん桜が多いから。まず家の近くの川の桜。私が具合が悪くて朝病院に行ってそのまま川べりを散歩しよって、行ったら二人とも茫然とするほど、見渡す限り川沿いが桜であふれてて、二人で歩いても歩いてもまだ桜が続いてた。

おしまいには疲れて、これまで入ったことのない、小さな喫茶店に入って窓から桜を見てた。川の堤防以外何もないところにあるから、はじめ店の中は誰もいなかったのに急に他の人たちも入って来ていっぱいになった。店長の上品な女の人がカウンターに座った若い女性たち相手に、際限なくおしゃべりしはじめて、聞くともなしに聞いてたら、もう10年とか20年とかその喫茶店はあって、その間にご主人が亡くなったり、儲からないけど続けてるって。喫茶店の本棚には「婦人画報」が置いてあって、それも桜特集。

その後通勤の時、電車の鉄橋の上から見た別の川の桜がきれいで、週末地図で調べて行ったら予想以上にたくさんの桜が、下りた駅からその橋までずっと続いて、私とヴィンセントはコトバも失ってほとんど黙って歩いた。橋に着いたら隣の寺の大きな桜の下に座ってしばらく花の散るのを見てた。

母は私がまだ子供だったとき桜が満開の時亡くなった。それ以来桜を見るとまぶしさに心が痛んだものだけど、こんなにも多くの桜を見るうち、過去の残酷な記憶も、ペールピンクの向こうに遠のいている。
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by nanaoyoshino | 2008-04-29 11:55 | SimpleLife/普段着の英語

20 コンドームと仮面(mask)

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(ミュージアムショップにて) At the museum shop.
「見て、このマスク。まんなかに‘X’のしるしがついてる。これをつけると口がミフィーになれるんだよ」
”Look! This mask has a ‘X’mark in the middle. Your mouth becomes Miffy’s with this.”
「ほんとだ、隣の絵本のミフィーみたいだ」 ”That’s right! That’s like Miffy’s picture book next to this mask.”
「以前私が好きだったジョーク覚えてる?」 ”Do you remember your joke I liked before?”
「僕の妻はどこだ!」 ”Where is my wife?.”
(私がマスクをはずす)I take off the mask.
「あっ、君が僕の妻だったんだな」 ”It’s my wife!”
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「普段着の英語」ピックアップ

***美術館に初めて行った。長年一緒に仕事をしてきた広告クリエイターのAさんのご家族が芸術家で、作品を展示してたから。以前からAさんにアーティストのご家族のことずいぶん聞いてた。たぶん私と同じくらいの年齢で、外国に長く住んでて、結婚相手が最近亡くなって、それから大病を患ったり、そんなこと。ご本人を見かけたけどとても元気そうだったし、想像したとおり魅力的な人だった。

展覧会には海外作家も含め、現代の注目されているアーティストの作品が展示されてた。見終えた後、ヴィンセントがどれが好きだったって聞いた。透明な細長いビニールを天井からぶらさげたやつかな、って答えた。これは別の日本人アーティストの作品ていうかインスタレーション。ヴィンセントはそれを見てコンドームを連想したって。あーそんなことばっか考えてるんでしょ、って冗談言ったら、急いで「傘袋かな?」と訂正した。その日は雨が降ってて入り口で傘袋渡された。

なんでそれが好きなのかっていうと、白い何もない部屋に透明な薄い膜みたいなものが、いろんなカタチに折り曲がってぶら下がってて蛍光灯の光が少し透けて、きれいだったから。といってもコンドームはいい発想だった。というのも私はそのインスタレーションを見て、「消費社会」を連想した。

コンビニやマックのゴミ箱って、紙類はほとんどなくて、ビニールやプラスチックばかり。ずっと前中国のまだ経済がそれほど発展してない田舎のゴミ箱の中をぞいたら果物の皮ばかりで、ゴミ箱を意味する中国語の漢字(果物の皮の箱とかそんなふう)そのものだったけど、消費社会のゴミってビニール類が多いんだなって改めてそのとき思った記憶がある。コンドームも性を消費してる、消費社会の一側面だ。

ヴィンセントは他のアーティストの作品で、ムービーで自作自演してたのが気に入ったって。トレーシングペーパーみたいな紙をかぶってその紙の上に口紅で口を書いたりアイラインで目を描いたりしてたやつ。西洋人ってマスクってものに、日本人と別の明確なイメージを持ってる気がする。日本人はマスク=医療目的と思うけど、もともとマスクって英語だし、伝統的には上流社会の仮装舞踏会とか「別人になる」という認識なんだ。マスクにメイクする人に、誇張された人間の虚構性とか二重性とかをヴィンセントは感じたのかな。

そのムービーの隣に展示された同じアーティストの作品は壁に絵が描いてあって、その上にムービーでメイクしてたのと同じトレーシングペーパーが貼ってあり、そこに別の絵が描いてあって絵はしっかり貼られてなくて一部がはがれていて壁の絵と紙の上の絵と、両方の絵が見えるっていうやつ。

クリエイターAさんから以前ご家族のアーティストは、芸術家だけどお金はあまりないって聞いた。他のご家族にもひょんなきっかけからお会いして話しをしたこともあるけど、私の母と価値観が似てるなと思った。私の母は以前書いたように、自分の父を尊敬してたのだが、母の父、つまり私の祖父である人はお金のためじゃなく地元文学の編纂という仕事に一生を費やした。

この美術館、「私の遠い親戚が建築家なの」とヴィンセントに説明したことがあったけど、建築家は私の祖父の甥にあたる。この建築家の作品は他にも写真でも見たことがあったけど、実物を見たのは7歳のとき以来で、やさしさと新しさを感じるこの建物に、意外なほど好感を持った。建築家は最近亡くなったのだが、(子供の頃からよく名を聞いてたけど一度も会ったことがない)彼の建築を見て中に入って、亡くなる前に一度会いたかったと思った。

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by nanaoyoshino | 2008-04-27 22:57 | SimpleLife/普段着の英語

19 サマーハウス(夏のお茶室)にて

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「バーサとサムってリタイアしてるのに、どうしてこんなことする経済的余裕があるのかな」”How can Bertha and Sam afford to build this after retirement?”
「夫婦二人とも30年以上働いてた企業から、年金をもらってるよ」”They’ve got pension from the companies they worked for more than 30 years.””
「その話でアリとキリギリスの童話思い出した。知ってる?」”That reminds me of the tale about the ant and the grasshopper. Doyou know the story?”
「たぶん知らないね」””Probably not.”
「アリが一生懸命働いてる間キリギリスは遊んでて、冬がきたら、困ったのはキリギリスって話。バーサたちがアリで私はキリギリスだよ」””In summer the ant worked hard and the grasshopper played. Then winter came, the grasshopper didn’t have anything to eat. Bertha and Sam are the ants and I’m the grasshopper.”

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休暇が長いヴィンセントが先にイギリスに行き、私は後を追い、ついにバーサの家にやって来た。ここはまるでバードサンクチュアリみたい。ヴィンセントは隣で眠ってる。川の水の流れる音やいろんな鳥の声を聞いてるうちに、バーサのサマーハウスを好きになった。はじめ、サマーハウスは一見おもちゃみたいにきゃしゃな作りに見えがっかりした。

今まで気がつかなかったけど、こんな6角形のガラスの小屋を庭に持つ家は郊外ではときどき見かける。ただバーサのサマーハウスみたいに、川のすぐ脇に建っているのはあんまり多くないと思う。

ここからは川に反射する日の光がよく見える。でも川が近いから、大雨が降ったりしたら小屋ごと川に流されてしまいそう。ごく小さい、3畳くらいしかないほとんどガラスでできた小屋だし、大きな木に囲まれてるから、木が倒れたりしたらすぐ壊れてしまうかも。じっさい最近強風で木がこの家をかすめて倒れたので、あやうく難を逃れたそう。

バーサの夏のお茶室でうたたねをして「ハワーズエンド」の映画を思い出したのでヴィンセントにそう言ったら、「じゃ、金持ちのアクセントで僕も喋らなくちゃな」と映画「ハワーズエンド」に出てくるメグ役のエマ・トンプソンみたいな喋り方をした。イギリス人なんだから真似ようと思えば真似られるのは当然なんだろうけど、中産階級のアクセントで話すヴィンセントが一瞬別人にうつった。

「ハワーズエンド」では知的で裕福な家柄の二人の姉妹が、それぞれ自分たちと違う家庭の異性に恋をする。まあこれはイギリス恋愛小説に典型的か。で、姉が恋したのはいわゆる成り上がり的に出世して姉妹の家庭以上に裕福な商人で、妹が恋したのは貧乏な文学青年と全く違うタイプ。この4人とそれぞれの家庭の複雑な絡み合いでストーリーは進行し、その中心にいつも「ハワーズエンド」という名の田舎の家が存在する。(イギリスでは家にコテージ名がついてることがある)

映画の「ハワーズエンド」では、雨が多いイギリスの事実と違って、空はなぜかたいていよく晴れて季節はいつも夏。きちんとした身なりの登場人物が、庭で紅茶を飲んでるようなシーンが多く、汚い裏通りもこじきのようなかっこうのティーンエージャーも、飲んだくれのオヤジも出てこない。ストーリーは、偶然がやや多すぎる。「こんなに偶然があるわけないじゃない」と言いたくなるものの、後半にあるこんなセリフがとても好き。

貧乏な文学青年がやけになって言う。
「間違いならいいと思うんですがね・・・金こそ現実なのです、他のものは全部夢なのです」
こたえて妹が言う。
「もし私たちが永久に生きているのなら、不正や貪欲は現実のものかもしれない。ところが実際には私たちは他のものにしがみつかなくてはいけない。『死』がいつかはやってくるのですから。私は『死』を愛します。といっても、病的にではなくて、『死』が説明をつけてくれるのですから。『死』はお金がいかに空虚であるかと私に示してくれるから。永遠の敵同士なのは『死』と金であって『死』と生ではないの」(小池滋訳 みすず書房E.M.フォスター著作集「ハワーズエンド」)

庭は広いのに、バーサと夫のサムはわざわざ庭の端の、嵐がきたらすぐに流されてもおかしくないほど川縁にこの小さな小屋を建てた。桜の花が散るように、美しいまま短く消えていくものはいっそう美しい。ガラスの小屋が川に流されても、美しいかな。そんな話を眠りに落ちる前のヴィンセントにしたら不思議そうな顔をしたので「命だって、消えてくからこそ美しいんじゃない」と言ってみた。

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by nanaoyoshino | 2008-04-10 00:51 | SimpleLife/普段着の英語

18 オプス・デイのクララ

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「『ダビンチ・コード』英語で読もうかな」”I might read The Da Vinci Code in English.”
「どういう風の吹き回し?」 ”What happened to you?”
「難しい?」 ”Is it difficult?”
「簡単だよ」 ”It’ s easy.”
「この本1冊っきり? 日本語版は3冊だった気がする」
”Is this just one book? I think the Japanese translation was 3 books. ”
「きっともっと儲けるためさ、マーケティングってやつだな」
”Maybe they want to make more cash. It’s a marketing plan.”
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普段着の英語ピックアップ

最近用事があって友人のクララに電話をし続けてるけど、まだつかまらない。今さらって感じだけども、「ダ・ヴィンチ・コード」っていう映画は、ハリウッド映画らしい悪玉対善玉の文脈が筋。で、オプス・デイという実在の団体が怖ろしい秘密結社であるかのように描かれてる。私の知ってるオプス・デイには、カトリック団体という以外で、この映画に描かれてるオプス・デイとは共通点がない。

イギリスで語学学校に通ったとき学校から紹介されたのがオプス・デイの運営する女子寮だった。スペイン人がほとんどだったけど、全部で14人くらいが住むお屋敷は、イギリスとスペインの折衷のような伝統的な内装でここちよく整えられてた。食事のときはヨーロッパ映画に出てくる格式ある一家みたいに、大きなテーブルを全員で囲む。ヴィスコンティ映画の貴族の女主人よろしく堂々と強気でおおらか、おまけにエレガントな中年のスペイン人の寮長が、お誕生日席に座る。毎日3コースの食事を作る執事役のスペイン人女性は、その隣が指定席。私は仲のいいイネスと、反対側のはじっこでよくこの人作るレモン・メレンゲ・パイをめぐって楽しい奪い合いをした。

夜8時に図書室行けばポットに入った紅茶とミルク、ビスケットが差し入れられ「サパー」と呼ばれてた。私もスペイン人の学生たちも20代で、紅茶とビスケットが楽しみで、声をかけあっては、勉強よりはおしゃべりをしに図書室へ集まった。イギリスは初めてで目新しくて、毎週金土の夜は近くのおしゃれなバーに繰り出し、日曜日は名所史跡めぐりをした。私はスペイン語ができなかったので、英語で話した。

おなじ寮に住む薬剤師のイギリス人はクララという名で、スペイン人の学生たちによると、クララのほかに、美術館のキュレーターのイギリス人も寮の運営に関わっているとのことだった。オプス・デイのことは何も知らないまま、オプス・デイの寮を去るとき初めてこの寮で働く人たちについて聞いてみた。オプス・デイのために働く人たちは、イエス・キリストのため奉仕する一方社会でふつうの職業を持つことが勧められているとのことだった。オプス・デイにいる間、誰も余計な干渉をせず、オプス・デイの思想をおしつけることもなかった。

クララは日曜日のハイ・ティー(夕方出す簡単な食事)に出すパイを焼く担当で、一度一緒にキッチンに立って作り方を教えてくれた。クララはふだんは少しさびしげな、困ったような表情で理論的な話し方をする。高くて透明感のある声で、喋っていてもまわりに静けさを集めてるみたい。でもときどき彼女の青白い顔にあらわれた、キラキラしていたずらっぽい笑顔が、雪の上にさす明るい小さな日ざしみたいだったのを思い出す。

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by nanaoyoshino | 2008-04-01 00:51 | SimpleLife/普段着の英語