人気ブログランキング |

32 私が会った亡命美少年ニケ<西ドイツのエマウス-5->

e0144237_2317048.jpg

「ドイツがユーロ2008でポーランドに勝ったね」"Germany has beaten Poland at Euro 2008."
「イギリスはどうなの?」 "How about England?"
「うん、イギリスは無資格だよ。予選で敗退さ」 "Well, England was not qualified. They got beaten in the qualifiers."
「あーあ、サッカー発祥の国なのに?」 "Oh dear, isn't footy originated in England?"
「まさに、その『あーあ』がイギリスサッカーファンの反応だったんだ」 "That `Oh dear` was exactly the English footy fans' reaction."

■" footy" イギリスではサッカーはfootball。さらに口語では縮まってこうなる。
■"has beaten~" 「~に勝つ」
■"got beaten by~" 「~に負ける」
■"How about~" 「~はどうなの?」"What about~" との違いはほとんどないので同じように使って大丈夫。
○.・.。.・・・‥……━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「普段着の英語」ピックアップ

私が西ドイツのエマウスについて書いてきたことは、書く前まではあまり思い出すこともなかった。でもこの少年のことだけは忘れたことがない。私はこんなにも心が壊れてしまったように見える人に、今だに会ったことがない。(だからこのできごとを書こうと決めてから実際に書き始めるのに、かなり時間がかかった。)

記事やTVではどうしても書いたり撮った人の解釈が入る。それに実際に自分がその場にいて体験するインパクトは五感によるもので、得られる情報は似てるようでも、質は全く別物。だから私は知識だけある人と実際にその場にいた人では、後者の声のほうに耳を傾けるし、自分でもできるだけ体験し自分の解釈を持ちたい。

なぜ西ドイツのエマウスの家に戻ってきたのかは正確には思い出せない。ただアナベラとは楽しく過ごしたし、ヨハネス一家とは親しくなった。でも戻ってみると、ヨハネス夫婦は日々の廃品回収や、亡命者に関する手続きなどで忙しそうだった。キャンプの時に世界中から集まってた人がすっかりいない建物はただがらんとしてた。誰もいなくなった食堂の隣の空き部屋に、16歳くらいの少年を見かけたとき、べつに驚きもしなかった。エマウスの家は何かの事情で住むところが亡くなった人のためだし、ヨハネスの奥さんから、東ドイツからの亡命者が何人か住んでると聞いてたから。

最初は「ここに住んでるの」みたいなことを話しかけたんだと思う。少年の名前をニケとする。ニケは、南を向いた明るい空き部屋の隅の、マットレスみたいな、廃品の一部のような物の上にいた。ニケはまるで傷ついた動物みたいにおどおどしてた。透明な肌と、やわらかそうでやっぱり透明な感じの髪やうぶ毛がきらきら光って、人間じゃないと思えるほどきれいだった。ニケは片言の英語で自分がなぜエマウスの家にいるのか、話し始めた。

ある日ニケが学校から家に戻ったら、家はもぬけのからだった。いなくなった家族の一切の連絡先も、なぜいなくなったかの理由も、なぜ彼だけが置いていかれたのかも、ニケにはわからなかった。ニケは、家族が西ドイツに亡命したのだと思っていて、家族を探していた。たぶんニケの家族は壁が崩れる前、違法に西ドイツへ亡命したので、ニケには何一ついえなかったのだ。

ニケは涙を流してはいなかったが、ニケの心が壊れていることは明らかだった。ニケはニケを置きざりにした家族を恨むこともできず、ただその出来事をどう理解していいわからず茫然としたまま過ごしてきた、と言うふうに見えた。私はニケを慰める言葉など持ってなかったので、長いこと彼のそばにいることもできなかった。ただニケの話を聞く間、凍りついたように体が動かなかった。

<写真について>
売られてアンティークショップのウィンドウで窓の外、満開の桜を見るテディベアたちは、幸せそうだ。
撮った場所:東京

人気blogランキングへ←ありがとう!更新の励みになります。
by nanaoyoshino | 2008-06-10 23:52 | SimpleLife/普段着の英語
<< 33 サビついたスコアボード 31.ひたすら楽観的な旅人たち... >>