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18 オプス・デイのクララ

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「『ダビンチ・コード』英語で読もうかな」”I might read The Da Vinci Code in English.”
「どういう風の吹き回し?」 ”What happened to you?”
「難しい?」 ”Is it difficult?”
「簡単だよ」 ”It’ s easy.”
「この本1冊っきり? 日本語版は3冊だった気がする」
”Is this just one book? I think the Japanese translation was 3 books. ”
「きっともっと儲けるためさ、マーケティングってやつだな」
”Maybe they want to make more cash. It’s a marketing plan.”
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普段着の英語ピックアップ

最近用事があって友人のクララに電話をし続けてるけど、まだつかまらない。今さらって感じだけども、「ダ・ヴィンチ・コード」っていう映画は、ハリウッド映画らしい悪玉対善玉の文脈が筋。で、オプス・デイという実在の団体が怖ろしい秘密結社であるかのように描かれてる。私の知ってるオプス・デイには、カトリック団体という以外で、この映画に描かれてるオプス・デイとは共通点がない。

イギリスで語学学校に通ったとき学校から紹介されたのがオプス・デイの運営する女子寮だった。スペイン人がほとんどだったけど、全部で14人くらいが住むお屋敷は、イギリスとスペインの折衷のような伝統的な内装でここちよく整えられてた。食事のときはヨーロッパ映画に出てくる格式ある一家みたいに、大きなテーブルを全員で囲む。ヴィスコンティ映画の貴族の女主人よろしく堂々と強気でおおらか、おまけにエレガントな中年のスペイン人の寮長が、お誕生日席に座る。毎日3コースの食事を作る執事役のスペイン人女性は、その隣が指定席。私は仲のいいイネスと、反対側のはじっこでよくこの人作るレモン・メレンゲ・パイをめぐって楽しい奪い合いをした。

夜8時に図書室行けばポットに入った紅茶とミルク、ビスケットが差し入れられ「サパー」と呼ばれてた。私もスペイン人の学生たちも20代で、紅茶とビスケットが楽しみで、声をかけあっては、勉強よりはおしゃべりをしに図書室へ集まった。イギリスは初めてで目新しくて、毎週金土の夜は近くのおしゃれなバーに繰り出し、日曜日は名所史跡めぐりをした。私はスペイン語ができなかったので、英語で話した。

おなじ寮に住む薬剤師のイギリス人はクララという名で、スペイン人の学生たちによると、クララのほかに、美術館のキュレーターのイギリス人も寮の運営に関わっているとのことだった。オプス・デイのことは何も知らないまま、オプス・デイの寮を去るとき初めてこの寮で働く人たちについて聞いてみた。オプス・デイのために働く人たちは、イエス・キリストのため奉仕する一方社会でふつうの職業を持つことが勧められているとのことだった。オプス・デイにいる間、誰も余計な干渉をせず、オプス・デイの思想をおしつけることもなかった。

クララは日曜日のハイ・ティー(夕方出す簡単な食事)に出すパイを焼く担当で、一度一緒にキッチンに立って作り方を教えてくれた。クララはふだんは少しさびしげな、困ったような表情で理論的な話し方をする。高くて透明感のある声で、喋っていてもまわりに静けさを集めてるみたい。でもときどき彼女の青白い顔にあらわれた、キラキラしていたずらっぽい笑顔が、雪の上にさす明るい小さな日ざしみたいだったのを思い出す。

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by nanaoyoshino | 2008-04-01 00:51 | SimpleLife/普段着の英語
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