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永遠に変わらぬ愛なんてもの

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Vの実家で今書いている。実家には「売り家」の看板が出ていて、すれ違った近所の人が「家を売ることにしたのかい」って話しかけてきたり。

こちらでは「売り家」の看板をつけたまま、住んでいる家をふつうに見かける。

家の中は思ったほどがらんとしていない。大きな家具や電化製品はそのまま。
ただ家具の中はすっかり空になっていて、あまった段ボールが隅に折り畳んだ状態でたてかけてある。

160年前から先祖が使用してきたらしい聖書が、居間に置きざりにされている。こちらでは父が息子に、同じファーストネームをつけることも多いのでVのお父さんとまったく同じ姓名の使用者の名が並んでいる。

Vのお父さんが老人ホームに入る少し前、Vのお父さんの弟 (Lおじさんのこと)が、Vのお父さん一家が、生まれたころから住んでいて最後は自分一人で住んでいた家を売った。

これでVは帰省しても行く家が、なくなってしまった。

Vは帰省するときいつも空港で、実家の向かいに住んでいる老夫婦のために、タバコを1ダース分くらい買っていく。この老夫婦はタバコが大好きなのに、イギリスではタバコに高い税金がかかるので1箱千円くらいするのだそうだ。

一度この家でいきなり見知らぬ男がぬっと入って来てビックリしていたら、彼がVに「僕を泥棒かなんかみたいに見ていたよ」と言っていた、それがVの実家の合鍵を持っている隣人だった。

去年あたりから彼はタバコをやめ、Vは彼の奥さんのためにだけタバコを買っていて、今回も私が知らない間に買っていた。

でも空港に迎えに来てくれたVのお姉さんによると、奥さんは亡くなったのだそうだ。3月に帰省したときはタバコのお礼に彼からVは紅茶をたくさんもらった。玄関でのやりとりだったので彼女には会わなかった。では彼女はその後亡くなったのだろうか。

きのうはVのお姉さん夫婦と、レストランで食事した。以前はVのお父さんが一家の長たる貫禄で必ず来ていたのに、老人ホームに入ったころから外出したがらなくなり、会食にも来ない。

Vと私が行ったプラハの労働者博物館の話をしていたらお姉さんのだんなさんが、Vの実家の地域にも同じような博物館があると教えてくれた。その博物館では彼が子供の頃父親が行っていたパブが、展示されているらしい。彼のお父さんは炭坑労働者で、仕事の後にその炭坑でビールを飲むため、まだ5歳くらいだった息子をパブの外で待たせたのだと言う。彼は博物館で、父親が通っていたパブの中を初めて見たんだって。

Vは故郷の近辺を一緒に歩いていると、急に不機嫌になることがある。以前は空港から故郷にバスで近づくだけで顔がだんだん不機嫌になった。

今日は以前鉄道が走っていた深い谷間にかかる、美しい橋を見に行ったとき、不機嫌になった。Vが子供の頃以来行ったことがなく行き方を覚えてないというのだけど、地図で探したら近所だった。谷間の洞窟も思い出して連れてってくれた。

いったいどういう過去が、彼をここまで急激に不機嫌にさせるのか、わからない。でも過去のことを聞きたいとも思わないので、不機嫌の理由はとくに聞かないで、勝手に不機嫌になる彼にこちらも不機嫌になる。

どんなことも永遠に変わらずにいることなどない。たとえばVのお父さんとお母さんの愛が永遠に見えたとして、それはお母さんが早く亡くなったという変化のためかもしれない。

私はVの家族が永遠に何も変わらないようないかのように考えていたけれど、いろんなことが、急激に変わっている。
by nanaoyoshino | 2010-08-15 20:31 | hundreds of days off
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