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英仏横断鉄道の恋

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おじさんに背中を押されてやっと中へ入ると、Jが「すごおく広くて人が大勢いる」と言ってたので連想した「デパートの食堂」とはまるっきり別のビジュアルが広がった。(写真)

デパートの食堂って、天井が低くてだだっぴろい中、スチール製のイスとか安っぽいテーブルがずらって並んでる感じ。

パリのこのレストランは中2階にも客がぎっしりで、ファミレスどころの規模じゃない豪快さ。大理石の腰板、異様に高い天井の下の大きな鏡、金の飾りは、ロートレックのムーランルージュの舞台を連想させた。

ボーっとしてたら、ギャルソンがテーブルに案内してくれる。ところがそのテーブルにはすでにフランス人のカップルが仲睦まじげに着席中、もちろんテーブルのお皿にはお料理がいっぱい。

あら相席なのね!?と思った瞬間、Vの顔がフリーズする。ありえないって、顔。
イギリスで相席って、そういえば、パブ以外ではない。日本の蕎麦屋とかみたいに、レストランでの相席の習慣などがないのだろう。
しかもテーブルが、2人用?っていうかなりのミニサイズ。
ぎっしりつまってる印象なのは、テーブルが小さいせいもあるのかも。

「つぶされないでね」って、相席の男性が冗談を言う。そのときに私が考えてたことったら、
「隣がフランス人ならメニューがフランス語でも、教えてもらえてラッキー!」
私とVとでは、気分のベクトルが正反対なのは、いつものこと・・・。

この隣人が英語で冗談を言ったのは、あまりに自然だったので一瞬で忘れ
彼らに話しかけて通ずるかどうか、思案しつつ観察してた。

するとレストランの騒音の合間に聞こえてきた、フランス語の彼女への愛の呼びかけ最中
いきなり1フレーズだけ英語になった。それも
「君はほんとに悪い女の子だねえ」かなんか、甘いセリフ!

いっぽうギャルソンは大忙し。

おそるおそる英語で話しかけたって、振り向かれもしない。で、相席の彼に英語で話しかけてみた。

「どう呼んだら振りむいてくれるかしら?」

話しかけてみると、彼はイギリス人だった。
Vとおたがいに「いやあイギリス人には見えなかったな!」とか、えんえんと無意味に感心しあってる。

彼女はフランス人。
彼が彼女に、「君のほうがいいね、君がメニュー訳してあげてよ」って。

メニューは1枚の薄い紙に赤い文字だけが書かれて、まるで特売チラシみたい。ちっとも格式ばってないのに、書体がクラシカルで、やっぱ19世紀っぽい。

彼女は当然フランス語なまりの英語。全メニューを訳して説明くれる。でも早口で、どの行がなんだったか、彼女が言った瞬間忘れてる、もうどうとでもなれ。
彼女のメニューは見るからに田舎っぽい、チキンの丸焼きと、インゲンのソテー。
「あ、これと同じのにして」
よく見ると、肉料理の名称は英語ソックリ、たとえばポークがポルクだったり。でも魚がぜんぜん英語と違う。

彼女が慣れた調子でフランス語で一声叫ぶと、あらフシギ、すぐにギャルソンが飛んでくる。注文はギャルソンが、紙のテーブルクロスに書いてく。即興芸術のような速さと、抽象画?って文字で。
隣席の彼は、Vにしきりに日本のことを聞いてくる。彼女のほうが退屈そうなので私が、

「なんでこここんなに行列してるのかな?」
と話しかけた。

「なにしろ、この価格だから!でももっとおいしいとこがあるわよ」
さっそくそのチラシっぽいメニューに店の名前を書いてくれている。やっぱり私には解読不可能な文字で。とはいえVとしゃべってる、ボーイフレンドのことが気になって仕方ないらしく、あんまり私の話しとかは、聞いてないんだけど。

料理は見た目とおんなじに、なにやら素朴なイギリスっぽい味!やっぱり、なんだかんだ言っても距離が近いからか。彼女と私が薦めて、おそるおそるエスカルゴを食べるVは、すでに2皿目を食べたがってる。

イギリス人の彼はスイスで教育を受けたから、バイリンガルとのこと。
(確かスイスはフランス語も話される)
で、英仏横断トンネルを毎週通って、フランス人の彼女に会いに来る。
by nanaoyoshino | 2009-09-03 01:47 | 世界の庭とごはん
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