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雨の音、風の音

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先日書いたジプシーの音楽などについて意見をやりとりする機会があり、返事を書こうとおもったら長くなったのでここに書くことにした。

外国に行くとまず、外国語のひびきが音楽のように感じられる。


民族音楽ってCDで聴くより、当地に行って初めて、からだになじんでくるもの。光や湿気や熱気と寒気、街や人のさざめきとひびきあって立体的に、音楽が香みたいに、からだのなかに満ちてくように感じる。

インドのお香のにおい、電気がない夜のはてしない喧騒、モロッコでの夕闇の中のコーランのひびき、ひれふし祈る人々、トルコの長距離バスの中で車掌が乗客一人ひとりにかけるコロンの香り、そんなたくさんの小さな記憶をからだのどこかが覚えてる。インドとアラブの音楽は、強烈なというか、あまりにも違うがゆえに、抵抗できないナゾめいた魅力だった。*

スコットランドに住んでたとき、誰かが練習するバグパイプが、風に乗って聞こえてくることがあった。

まあるい曲線をなだらかに描いて芝生なんか生えてる平坦な丘は(UKでも)イングランド的。スコットランドの丘はゴツゴツして高い岩山みたいにうねうねと続く。だから遠くの音も山にさえぎられ澄んだ空気の中で届くように、バグパイプの音はスコットランドのハイランド(高い丘)をかけめぐる風の音みたいだった。

シベリア鉄道で旅したときは、荒涼と果てしなく続くシベリアの野に、ラフマニノフの厳しくも壮大な音の生まれた土地を見たように思った。

ブラジル、ラテンアメリカ、アフリカの音楽、ジプシーの音楽は旅せずとも前から好きで、ラテンやアフリカの音楽はそもそもポピュラーで耳慣れていたから受け入れたのかも。ジプシー音楽はエミール・クストリッツァとかいう、映画監督による「ジプシーのとき」という映画以来好きです。映画は当地へ旅する疑似体験みたいなものだから。

日本の津軽三味線と和太鼓は世界的にも認められた日本の伝統音楽と聞きました。日本は地理的に孤立した島国だからか、先進国なのに伝統がいまでも外来勢力に駆逐されてなく、お祭りのさかんなことは、先進国一?というくらい。

民族音楽は当地では古い音楽でも、私たちの場所ではとても新しく感じることが多い。パリやミラノのファッションが毎年世界の民族衣装をアレンジしてとりいれずにいられないのも、同じ理由のように思える。その意味ではまさに旅をすることの魅力とも同じかもしれない。

*エリアス カネッティ、Elias Canetti「マラケシュの声―ある旅のあとの断想」は、まさにそんなマラケシュというアラブ世界独特の音と気配をつづった本で、ただ音による気配の描写だけで楽しめるエッセイ。ちょっと難しげな本でしたが読んでみたら難しくなかった。
by nanaoyoshino | 2009-05-12 22:43 | hundreds of days off
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