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すばらしい新世界・他人と同じか?違うか?

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「日本語では『異なる』も『間違ってる』も同じ(*1)表現だよ。あなたのコトバでは?」 “In Japanese ‘different’ and ‘wrong’ are expressed by the same word. What about your language?”
「『異なる』と『間違ってる』が同じなんてことはないね」 “I don ‘t think ‘different’ can mean ‘wrong’.“
「日本語では『同じ」も「共に」も同じ(*1)表現だよ。英語では?」 “In Japanese ‘same’ and ‘together’ are expressed by the same word. What about English?”
「『同じ』と『共に』が同じだなんてありえないね」 I can ‘t think ‘same’ can mean ‘together’. 

*1「違う」
*2「一緒」
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普段着の英語

わずか34階のずんぐりした灰色のビル。正面玄関の上には、「中央ロンドン人工孵化・条件反射育成所」なる名称。また盾形の中には、世界国家の「共有・均等・安定」という標語。

という出だしで始まる小説「すばらしい新世界」は、イギリスの作家・オルダス・ハックスリーによって1932年に発表された。76年も前に書かれた未来小説だけど、2008年の今読んでもあまり違和感がない。冒頭の引用でちょっとわかると思うけど、ここに描かれてる社会では、個人の幸せより全体の幸せが重んじられ、この価値は共有され孤独は避けられる。

「すばらしい新世界」では全ての人が体外受精で生まれ、教育センターで上に上げたような価値観が寝ている間の条件反射教育や学校教育で、繰り返し教えられる。第二次世界大戦中の日本の軍国主義教育よりはるかに徹底して特定の価値観を刷り込まれる。この社会ではだから、適応できない不満のある人間がとても限られる。この小説がユートピアを描きながら、非ユートピア小説と考えられてるのは、それでもいる少数の異端者の目から描かれてるからとも言える。

「結婚してないという理由で、社会的プレッシャーを感じてる人がいる」ともし、イギリスで言ったら、言われたイギリス人は意味がわからないか、冗談と思うかもしれない。そのくらいイギリスでは結婚するしないは、単純に個人的なことと考えられてる。私の日本人の知人には、家業や苗字を継ぐ継がないかとか、相手の職業を親が気に入らないとか、親の面倒を見る見ないとかいった理由で、結婚をあきらめたり反対されて親との折り合いが悪くなった人が思いつくだけで相当数いる。イギリスと比べると、日本の社会がどれだけ「みんなの幸せ」を優先して、個人の幸せを後回しにしてるか。

それでもたいていの人は孤立は避けたいと思う。一人ぼっちはいやなのだ。イギリスだってそれはおんなじで、イギリス人が幸せかというと、来日して以来日本の、モメゴトをさけて白黒をあいまいにし、おたがいの空気を読む社会に和むというイギリス人もいて、西欧個人主義にはうんざりしてる人だっている。私だって日本の社会の暖かさに一種のユートピア性を感じなくもない。

「すばらしい新世界」で完全に遺伝子操作されて生まれる人々は、あらかじめ定まった社会をかたちづくるために役立てられる。だから支配する側の人間はその社会のしくみを熟知したり独自に発想もできる知能を生まれつき持ってる。逆に支配される側の人間は、あらかじめその環境に適合するように作られた、遺伝子すら同じ大量生産のクローン人間たち。そして支配する側のほうが、人によっては適応しにくいという。物語は、異端者の1人が、マスコミにパパラッチされた挙句自殺して終わる。

「すばらしい新世界」 講談社文庫

<写真について>
遠目に見るとたんなる仕切り。近寄ると、「日本」という字がデザインされてるとわかる。スキマがから、カフェで働いている東欧出身の女の子が見える。
<撮った場所>
ヘルシーな日本食がブームらしい、イギリスの国際空港のスシ&オリエンタルカフェ。
by nanaoyoshino | 2008-10-06 00:41 | SimpleLife/普段着の英語
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