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ドアから離れてお待ちください

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Vの家から歩く"walk"(散歩道)は、昔、川沿いに、街を通り港まで続く鉄道だった。

この地域は産業革命の時代に、炭坑や鉄鋼産業がさかんだった。鉄道で石炭や鉄を運んでたんだろうな。

昔の写真を見ると、Vのお父さんが働いていた鉄鋼工場には、たくさんの鉄道線路が工場内にひきこまれていて、工業用の鉄道がこのあたりにかなりはりめぐらされていたことが想像できる。

このあいだ書いた、深い谷にかかる橋も、Vのお父さんにたずねたらエンジン工場に鉄鋼を運ぶために作られたものらしい。Vによればエンジンという語は、列車も意味すると言う。いかにも産業革命が石炭エンジンによっておこったイギリスっぽい。

Vの家の前にも高台になっていて駅だったところが、今は住宅地になっている。エンジン工場と港までは50キロくらいあるかと想像するけれど、この大部分がおそらく「ウォーク」と呼ばれるハイキング用歩道になっている。

Vの上のお姉さんが住むところ、川沿いの小さな町まで歩いて約3時間ほどの道は林に囲まれ、丘陵地帯の峰に沿って作られているから、平坦で歩きやすい。

途中で林がとぎれる4カ所くらいは昔駅だったところ。今は芝生の公園のようになっていて、駅の建物は民家になっている。

一部にはまだプラットホームのかたちがそのまま残っていて、イギリスで電車がホームを出発するときよくアナウンスされる「どうぞ、ドアから離れてお待ちください」という放送が聞こえてきそう。

そんな田舎に工業用の駅など不要なはず。工業用線路ではあっても、Vのお父さんによると、ダイヤは少ないけれど客用列車もあった。林が開けたそこからの見晴らしはすばらしい。(つづく)
by nanaoyoshino | 2010-08-21 09:09 | 世界の庭とごはん
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