寒い日にみんなで<Advertising Peace Project-4>
もともとMは、戦争で分断され内紛状態になった彼の国の人びとの気持ちをひとつにする広告を作りたがった。彼が提案したのは、彼の国にある世界的に有名な歴史的建造物をモチーフにする案だった。彼はその歴史に誇りを持っている。
最初私もアートディレクターも、そのモチーフで何案か考えた。 その案は、このプロジェクトの主催者とうちあわせをしたら、高尚過ぎるのではと言われてしまった。生死にも関わるような戦争の生活の中で、歴史的建造物をいちいちふり返ってる余裕はないよ、と。 そんな状況に東京の真ん中で思いをはせるのは難しい。だけど、戦争中でも関心をもってもらうためには、一瞬で気持ちがふっとそこへ行くようなモチーフでないといけないね、という話になった。それに広告は、高尚な人たちを相手にするものじゃない。理論なんかじゃなく、人間共通の感覚に訴えるものが合っている。 紆余曲折を経て最終的に残ったモチーフが、Mの国の伝統料理のモチーフだ。現地の人が冬の寒い日に、家族や近隣の人と、みんなで囲んで食べるという、Mの国の鍋。 彼の国の資料を選ぶ時、なるべく政治経済よりも、生活感のあるものを選んだら、その料理の写真が載っていた。 Mの同国人の友人にも話を聞いたのだけど、色んな人種や宗派がある彼らの国でも、そういう違いと関係なく食べられている、人気のある家庭料理とのことだった。 一度この料理を撮影すると言う話になったとき、Mの友人に聞いた。 「奥さん、この料理作れる?」 「作れない。でも実家の母なら作れる」 では、私が作ってみようということになり、レシピをMがネットで検索して送ってくれた。 Mの友人にそのレシピについて聞いたら、「ぜんぜん違う」と声を荒げる。Mは納得して送ってくれたので、地域や民族によって具材がかなり違うということだ。ちょうど日本の伝統的な、地域ごとで異なる鍋料理みたいに。 戦争を終わらせる武装解除のプロセスも、いろいろあるのかもしれないけど、儀式として銃を燃やす(銃の金属部は燃えないが)という場合があるそうだ。 できあがった広告では、銃を燃やす火が、鍋を煮る火になっている。 <つづく>
by nanaoyoshino
| 2009-12-01 01:00
| hundreds of days off
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